うちの子が突然「とぅんとぅん」言い始めた|小学生を夢中にさせる”ブレインロット”の正体と、親がやりがちな失敗

夜の古い駅の前で、細長い体と大きな目を持つ不気味な木のキャラクターがバットで地面をたたいているトゥントゥンサフール風のイラスト 日常疑問
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本記事では、小学生の間で急速に広まっているネットミーム「ブレインロット」の正体と、子どもが夢中になる理由、そして親が気をつけたい向き合い方についてわかりやすく解説します。


こぴよ
こぴよ

とぅんとぅんさフール! トララレロ・トラララ……

ぴよ
ぴよ

…!?!?

るな
るな

今のなに? 呪文?

こぴよ
こぴよ

え、とぅんとぅんだよ?

ある日突然、リビングで子どもがスマホを片手に、白目を剥くような勢いで意味不明な言葉を口走り始めた。そんな光景を目にして、「うちの子、大丈夫かしら?」と不安になった親御さんは少なくないはずです。

実は今、全国の小学校の教室で、大人の理解を完全に置き去りにした「ブレインロット(Brain Rot)」という巨大なネットミームの嵐が吹き荒れています。小学館の調査によれば、2025年の小学生流行語ランキングで「イタリアンブレインロット」は低学年女子1位、全体でも2位にランクイン。もはや一部のネット依存の子だけの話ではなく、現代の小学生にとっての「標準的な娯楽」となっているのです。

参考小学館「2025年小学生年間トレンド調査」

今回は、この正体不明のブームがなぜこれほどまでに子どもを惹きつけるのか、そして親が陥りがちな「失敗」と正しい向き合い方について、深く掘り下げていきます。


ブレインロットとは?130体以上の”異形”が踊るカオス

「ブレインロット」という言葉は、直訳すると「脳の腐敗」。もともとは海外のネット掲示板などで、低品質で無意味な動画を見すぎて知性が溶けていく状態を自虐的に指す言葉でした。2024年にはオックスフォード大学出版局が「今年の言葉」に選ぶほど世界的な社会現象となり、2023年から2024年にかけて使用頻度が230%も増加しました。

現在、日本の小学生の間で猛威を振るっているのは、その進化系である「イタリアン・ブレインロット」です。主役は、生成AIによって作られた奇妙なキャラクターたち。

カプチーノ・アサシーノ:頭にカプチーノを乗せたバレリーナ

ストロベリー・エレファント:血管が浮き出た筋肉質なイチゴの象

ボンバルディーロ・クロコディーロ:奇妙な動きをするワニ

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彼らが、イタリアの古い楽曲をハイテンポにリミックスした音源に合わせて、不自然なコマ送りで踊り続ける動画がTikTokやYouTubeショートに溢れています。2025年9月時点で、確認されているキャラクターは130体以上。もはや一つの巨大な「多神教の世界観」のようになっており、人気キャラのぬいぐるみやキーホルダーがクレーンゲームの景品になるほどの市場を形成しています。

小4男子の証言

ある小学4年生の男の子は、友人との会話でこう語っています。

「トララレロ・トラララ!って叫ぶと、友達が『ボンバルディーロ・クロコディーロ!』って返してくれて、それだけで大爆笑になるんだよ。まるで合言葉みたい」

子どもたちにとって、この意味不明なフレーズは仲間意識を確認する「共通言語」なのです。

なぜ子どもはハマる?脳をハックする3つの仕掛け

大人が見れば「不気味」「意味がわからない」で終わるこの動画が、なぜ子どもの脳をここまで掴んで離さないのでしょうか。

① 「意味の欠如」という究極の解放感

今の子供たちは、塾や学校で「正解」や「教訓」を求められ続けています。そんな中、ブレインロット動画には1ミリの意味もありません。教育心理学の専門家は、「意味を理解しなくていいという状態は、子供の脳にとって最高の休息であり、解放感につながる」と分析しています。

② AIが生み出す「不気味の谷」の刺激

AIが生成する映像には、人間には描けない「独特の歪み」があります。この「どこかおかしいけれど目が離せない」という感覚は、脳にとって非常に強い刺激となります。かつての「ウゴウゴルーガ」や「ボキャブラ天国」のようなシュールさの現代版とも言えますが、AIによる予測不可能な造形が、好奇心を限界まで煽るのです。

③ 短尺動画によるドーパミン・ループ

これが最も注意すべき点ですが、ショート動画のアルゴリズムは、子供が「もう一本だけ」とスワイプを止められないように設計されています。5秒おきに訪れる「何これ(笑)」という瞬間的な快楽。それはまるで、脳に直接ジャンクフードを流し込んでいるような状態です。

科学が証明する「脳への影響」

「ブレインロット」という言葉は冗談めいていますが、ショート動画の過剰視聴が子どもに与える影響については、複数の研究が警鐘を鳴らしています。

集中力と学業成績への影響

中国学院の研究チームが、深圳市の小学生1,052人を対象に実施した調査では、ショート動画の視聴時間が長い子どもほど、学業成績と注意力が有意に低いことが判明しました。この研究では、視聴時間の長さと注意力の低下に負の相関があり、それが学業成績の低下につながる経路も示されています。

時間感覚の歪み

TikTokなどの短編動画の使用がユーザーの時間感覚に影響を与えるという研究も報告されています。111人の大学生を対象にした調査では、TikTok使用者は15分間の視聴後、実際よりも長く時間が経過したと感じる傾向があることが明らかになりました。この時間感覚の歪みは、計画やスケジューリングを困難にし、生産性の低下につながります。

親の視聴習慣も影響する

興味深いのは、親のショート動画視聴時間が長い家庭ほど、子どもの集中力低下が顕著だという点です。親がスマホに夢中になることで親子のコミュニケーションが減り、それが子どもの学習に悪影響を及ぼすと考えられています。逆に、親の視聴時間が少ない場合、子どもへの悪影響が緩和されることも分かっています。

持続的注意力の低下

日本の大学での研究では、TikTok依存群は非依存群に比べて「ながら作業傾向」が有意に高く、一つのタスクに集中する時間が短いという結果が出ています。ベネッセこども基金の専門家も、ショート動画視聴では「1つのことに長時間集中し続けることがない」ため、集中力・自制心が低下するリスクを指摘しています。

親の失敗談:「ダメ!」と言ったら逆効果だった

我が子の変貌を目の当たりにして、多くの親がやってしまいがちなのが「完全否定」です。

ある小3男子の母親は「そんなバカみたいな動画、見るのをやめなさい!」と叱りつけました。しかし、結果は逆効果。子どもは隠れて動画を見るようになり、親に隠し事をする罪悪感から、以前よりも動画の世界に深く閉じこもってしまったといいます。

また、「親自身がスマホをいじりながら注意する」というのも、現代の家庭でよく見られる失敗です。デジタルネイティブの子どもたちは、大人の矛盾を敏感に察知します。

「お母さんだってずっとインスタ見てるじゃん」

その一言で、親の教育的指導は説得力を失ってしまいます。

専門家が勧める「デジタル駄菓子」との付き合い方

メディアリテラシーに詳しい専門家は、ブレインロットを「デジタル駄菓子」と捉えるべきだと提唱します。駄菓子を全部取り上げるのではなく、「食べすぎないルール」を教えるのが教育の役割です。

① 禁止より「仕組み」を解説する

「これ、面白い動きだね。実はこれ、AIが作ってるんだよ」と、一段高い視点から会話をしてみてください。ただの「魔法の動画」ではなく「作られたコンテンツ」だと認識させることで、中毒性は和らぎます。

ある小4男子の父親は、息子が見ていた「ジャパニーズブレインロット」(「布団が吹っ飛んだ」などのダジャレ版)をきっかけに、「父さんも子どもの頃よく言ってた」と昔のダジャレ文化との共通点について話し、世代を超えた会話のきっかけになったと語っています。消費するだけではなく、文化的背景を理解する視点を持つことで、子どもは動画との距離感を保てるようになります。

② 「共同制作」でルールを作る

「1日30分」と押し付けるのではなく、「脳が溶けないようにするためには、どれくらいが適当だと思う?」と子どもに問いかけ、一緒にルールを書き出してみてください。

③ アナログな「脳のリカバリー」を

ショート動画視聴では集中力・自制心が低下するリスクがあります。ボードゲームやスポーツ、あるいはただの雑談。デジタルを介さないコミュニケーションこそが、元の状態に戻す最強の処方箋になります。

デジタルコンテンツとの付き合い方に関心のある方は、
こちらの書籍もおすすめです。

脳への影響や依存について、
親としてどう向き合うかを考えるきっかけになる一冊です。

興味があれば、参考にしてみてください。

結びに:流行は去るが、リテラシーは残る

ブレインロットは、現代版の「謎のブーム」に過ぎません。数年もすれば子どもたちは「あんなの流行ってたね」と笑う日が来るでしょう。

しかし、その流行にどう向き合ったかという親子の対話は、子どもの一生のデジタルリテラシーとして残り続けます。次に我が子が「とぅんとぅん……」と口走ったら、まずは笑って受け止めてあげてください。その余裕こそが、子どもを現実世界へと引き戻す一番の近道になるはずです。

ぴよ
ぴよ

最後まで読んでくれてありがとう!
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